歯を抜かないエクストルージョン法
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残存歯質が歯肉と同じか下にある場合の対処
○印の部分は虫歯の進行が激しく広範囲に渡って虫歯に侵されていたため、削ったあと残っている部分が歯肉と同じラインになってしまいました。虫歯だけでなく、歯が折れた場合などにもこのような歯肉と同ライン、もしくはそれ以下になってしまうケースがあります。
歯肉より上に残存歯質がないと土台は不安定に
歯肉より上に残存歯質がない状態で、歯と被せ物のジョイントの役目を果たす土台(コア)を立てると、脱落の可能性が大幅にあがり、予知性の高い治療ではなくなってしまいます。
この場合、たいていは抜歯してインプラントということを提案されることが多いようですが、当院では、エクストルージョン治療を行い、フェルール効果を獲得することで、予知性の高い被せ物治療で済ませられる場合があります。
フェルール効果ってなに?
被せ物が根の土台部分にのみくっついていると、咬合力がダイレクトに土台のみに伝わり、土台破損や被せ物脱離の原因になります。
予知性の高い被せ物を作る為には、歯の全周が歯肉より上に最低1mm出ていることがとても大切です。この1mmの部分に被せ物がくっついてると、根と土台それぞれに咬合力が分散され、それらが起きにくくなります。この力分散をフェルール効果と呼びます。
フェルール効果は、力分散だけでなく、被せ物の脱離と細菌の侵入による感染を防ぐ為に とても重要な条件ともなります。
フェルール効果を得るためにエクストルージョン治療を行う
フェルール効果の重要性はご理解いただけたと思いますが、歯肉より下にある歯をどうやって上に持ってくるのでしょうか?
その解決法として、エクストルージョンという治療法があります。エクストルージョンとはプチ矯正で、歯肉の下になっている根を、歯肉の上に引っ張り上げる方法です。
歯並びが悪い方が行う歯列矯正は、歯を基本的に前後左右に移動させますが、エクストルージョンは上下に動かします。上に引っ張りあげ、歯根を歯肉より上に持ってきて、フェルール効果を得ることが目的です。
実際に当院で行なった前歯のエクストルージョン症例1の解説
過去に他院で左上2番目の前歯の重度虫歯治療を行った患者様です。当院でこの歯に対して再治療を行うことになりました。
フェルール効果が得られない状態
このようなフェルールが得られない状態のまま、土台を立てて被せ物をしても脱離する可能性はかなり高くなってしまいます。
一般的には、抜歯をしてインプラントという選択をされる場合もあるかと思います。
しかし私どもは、根の状態は良好だと判断し、よりよい予後が期待できる被せ物をする為に患者さんにエクストルージョンを提案しました。
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③牽引装置
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④牽引装置を装着
根にフックを埋め込み、根が虫歯にならないように表面をコーティングします。歯肉の黒い部分は、土台や被せ物に使われている金属が歯肉の深い所まで溶け出したものでメタルタトゥーというものです。同時にこのメタルタトゥーに対してもレーザー治療を行っていきます。
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⑤ゴムの力で引っ張り上げる
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⑥ゴムを固定し牽引矯正治療スタート
⑪エクストルージョン法による前歯のセラミック治療完了
最終的な被せ物をセットして終わりになります。患者さんにも長期間の治療を一緒に頑張って頂けたので、ここまでもってくることが出来ました。最初の状態のまま被せ物をするのとは比較にならないほど予後のいい結果を得られたと思います。
▼上記症例の患者様データ
年齢・性別 | 32歳男性 |
治療期間 | 約4か月 |
治療回数 | 10回 |
治療費 | 約220,000円(税込) |
考えられるリスク | 根の長さが短くなることで動揺が出る場合がある。治療期間中に装置の脱離が起きる場合がある |
実際に当院で行なった前歯のエクストルージョン症例2の解説
▼上記症例の患者様データ
年齢・性別 | 30歳女性 |
治療期間 | 約4か月 |
治療回数 | 10回 |
治療費 | 約220,000円(税込) |
考えられるリスク | 根の長さが短くなることで動揺が出る場合がある。治療期間中に装置の脱離が起きる場合がある。 |
松戸で残存歯が足りないと抜歯を宣告された方へ
このように松戸デンタルクリニックでは、残存歯が足りないと抜歯を宣告された方にも、エクストルージョン治療を行い、根を適切な位置まで引き上げることで抜歯を回避させることができる場合がありますので、松戸で残存歯が足りないと抜歯を宣告された方はぜひ当歯科医院までご相談下さい。その歯は抜いてインプラントにしなくても済むかもしれません。